外反母趾でお悩みの方へ:歩き方と靴選び、専門家からのアドバイス
長年、外反母趾に悩む多くの方の足を見てきました。痛みを抱えながら毎日を過ごす辛さは、本当によく分かります。
その不快な症状は、無意識の「歩き方の癖」が原因で悪化しているかもしれません。
そして、その癖は「正しい靴選び」と「歩き方」を見直していくことも大切です。焦らず、ご自身の足と向き合っていきましょう。
1. あなたは大丈夫?外反母趾の方によく見られる歩き方の特徴
痛い親指の付け根を無意識にかばうことで、体は独特の歩き方を覚えてしまいます。
- 特徴①:指の付け根を使わない「ペタペタ歩き」 本来、歩く時はかかとで着地し、足裏全体で体重を支え、最後に親指の付け根で地面をぐっと蹴り出して前進します。しかし、外反母趾の方はこの「親指で蹴り出す」動きで痛みを感じるため、それを避けて足裏全体で着地するような「ペタペタ」とした歩き方になりがちです。
これにより、足裏の筋肉が衰え、さらに扁平足や開張足が進行する悪循環に陥ります。 - 特徴②:足の外側に体重をかける「横揺れ歩行」 痛い親指側(内側)に体重がかかるのを避けるため、無意識に足の外側(小指側)に体重を乗せて歩く癖がついてしまいます。この歩き方は、体を左右に揺らしながら進むため、足首や膝、股関節、そして腰にまで大きな負担をかけ、二次的な痛みの原因となります。
2. 歩き方を改善するための、今日からできる3つのこと
改善のポイントは、衰えてしまった足裏の筋肉を目覚めさせ、「親指を正しく使う」感覚を取り戻すことです。
- 足指を鍛える「タオルギャザー」 椅子に座り、床に広げたタオルを足の指だけで手前にたぐり寄せる運動です。1日5分でも構いません。足裏のアーチを支える筋肉を鍛え、指を使う意識を高めます。
- 「かかと→足裏→親指」を意識して歩く 大股で速く歩く必要はありません。まずはゆっくりで良いので、 ① かかとからそっと着地し、 ② 足裏全体に体重が乗るのを感じ、 ③ 最後に親指の付け根で地面を押し出す という一連の流れを意識してみてください。この「親指で地面を押す」感覚が、正しい歩行への第一歩です。
- 正しい姿勢を保つ 猫背で下を向いて歩くと、どうしても足元が不安定になります。頭のてっぺんを糸で吊られているようなイメージで背筋を伸ばし、視線を少し遠くに向けるだけで、自然と体重が足裏全体に分散され、安定した歩き方になります。
3. 最も重要!外反母趾の靴選び・5つの鉄則
「幅が広くて柔らかい靴」が必ずしも良い靴とは限りません。むしろ、靴の中で足が動きすぎてしまうことで、症状を悪化させることもあります。本当に足を守る靴には、5つの共通点があります。
- 【1】かかと周りが硬く、しっかりしていること 靴選びで最も重要なのが、かかとです。かかと部分を手で押しても潰れないくらい硬い靴を選びましょう。しっかりしたかかとは、歩行時にグラつく足を安定させ、正しい体重移動をサポートする土台となります。
- 【2】土踏まず(アーチ)を適切に支える構造であること 靴の中に、足のアーチ形状に合ったしっかりとした支えがあるかを確認します。これにより、足が内側に倒れ込むのを防ぎ、親指の付け根にかかる負担を軽減します。
- 【3】靴底が硬すぎず、指の付け根の位置で曲がること 靴を手に取り、曲げてみてください。靴底の真ん中(土踏まずあたり)でぐにゃりと曲がる靴はNGです。指の付け根の部分がスムーズに曲がる靴が、正しい蹴り出しを助けてくれます。
- 【4】指先に十分なゆとりがあること(トゥボックス) 指が圧迫されないことはもちろんですが、上下にも適度な高さが必要です。靴の中で指を少し動かせるくらいあるかを確認しましょう。
- 【5】靴紐やベルトで、甲の部分をしっかり固定できること スリッポンタイプの靴は避け、靴紐やマジックテープ式のベルトで足の甲をしっかり固定できる靴を選びましょう。これにより、歩行中に足が靴の中で前に滑るのを防ぎ、つま先が靴の先端に当たるのを防ぎます。
これらの特徴を持つ靴は、あなたの足を優しく、しかし確実に支え、痛みを和らげるだけでなく、歩き方の改善も助けてくれます。
もし靴選びに迷ったら、ぜひ専門知識を持つお店にご相談ください。あなたの足の状態を把握し、最高のパートナーとなる一足を見つけるお手伝いをさせていただきます。