生体の先生がご来店され、靴について話していると、歩くスピードについて話題になりました。
普段の歩くスピードを意識することは、健康寿命を延ばし、病気のリスクを減らす上で非常に重要であることが、近年の研究で明らかになっています。単に「歩く」だけでなく、「どう歩くか」が大切なのです。また、歩く前提として靴が足に合っているかが非常に大切となりました。
なぜ歩くスピードが大切なのか?
1. 健康のバロメーターとしての歩行速度
歩行速度は、単に足の速さを示すだけでなく、全身の健康状態を反映する重要な指標とされています。
- 総合的な身体機能の指標: 速く歩けるということは、下半身の筋力、バランス能力、心肺機能、さらには脳の機能が総合的に良好であることを示しています。
- 健康寿命との関連: 多くの研究で、歩行速度が速い人ほど、健康寿命が長く、介護が必要になるリスクが低いことが示されています。高齢者にとっては特に顕著な傾向です。
- 病気のリスク軽減: 速歩きは、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを低減することが報告されています。
2. 体への具体的な良い影響
歩くスピードを上げることで、身体には以下のようなメリットがもたらされます。
- 心肺機能の向上: 少し息が上がる程度の速歩きは、有酸素運動として心臓や肺の機能を効果的に鍛えます。これにより、持久力が向上し、疲れにくい体になります。
- 筋力の維持・向上: 特に下半身の大きな筋肉(太ももやお尻、ふくらはぎ)が鍛えられます。これにより、転倒リスクの減少や、将来的なサルコペニア(加齢による筋肉量と筋力の減少)の予防にもつながります。
- 骨密度の維持・向上: 適度な負荷が骨にかかることで、骨の新陳代謝が促され、骨密度が維持・向上します。骨粗しょう症の予防に役立ちます。
- 脂肪燃焼効果の促進: 運動強度が高まることで、より多くのエネルギーが消費され、体脂肪の燃焼が促されます。ダイエットや体重管理にも効果的です。
- 血行促進: 特にふくらはぎの筋肉が強化されることで、全身の血流が改善されます。「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎがしっかり働くことで、むくみや冷えの改善も期待できます。
- メンタルヘルスへの好影響: 適度な運動は、ストレスホルモンを減少させ、幸福ホルモンと呼ばれるエンドルフィンの分泌を促します。これにより、ストレス軽減や気分の向上、うつ病や不安症の予防にもつながるとされています。
3. 目指したい「効果的な歩行速度」とは?
「速く歩く」といっても、無理をする必要はありません。一般的に推奨されるのは、以下のいずれかの目安です。
- 「ややきつい」と感じる速さ: 汗がうっすらとにじみ、少し息が上がるけれど、なんとか会話ができるくらいの速さが目安です。
- 「時速4km〜6km」: 健康維持を目的とするなら時速4km程度、ダイエットや体力向上を目指すなら時速6km〜7km程度が推奨されます。時速7kmは、走った方が楽に感じるくらいの速さです。
- インターバル速歩: これは、速歩き(3分間)とゆっくり歩き(3分間)を交互に繰り返す方法です。例えば、最大体力の70%程度の速歩を3分、その後に3分ゆっくり歩くというサイクルを1日5セット、週4日以上行うことで、体力向上や生活習慣病の改善効果が期待されています。特に運動習慣のない方や高齢の方にも無理なく始めやすい方法です。
日常で取り入れるには
いきなり速く歩き続けるのが難しい場合は、以下のようなことから始めてみましょう。
- 意識的に歩幅を広げる: いつもより少しだけ歩幅を広げることで、自然とスピードも上がります。
- 腕をしっかり振る: 腕を前後に大きく振ることで、推進力が生まれ、全身運動にもなります。
- 背筋を伸ばし、視線を前方に: 正しい姿勢を意識することで、効率的に歩けます。
- 信号のある横断歩道を渡りきる速さを意識する: 多くの横断歩道は時速1.0m程度で設定されているため、これをクリアする速さを目指すのも良い目安です。
普段の何気ない「歩く」という行為に、少し意識して「スピード」を加えてみてください。足元からの健康促進、そして日々の活力が向上することを感じられるはずです。